大型漁業団地 養殖・海藻大量生産システム

(1)目的

海洋漁業が変化し収穫量が減少するなか、漁業のセーフティガードとして『陸上養殖栽培』でフォローし、『豊かな水圏』O2生産産業の創生を目的とします。

小割水槽を多数並べて、地域全体で協業調整し、大量生産を実現し、漁業振興を通して地域活性化を図り、『陸上収益』を活用し、『海の森づくり』に繋げていきます。

 

(2)構成

地域住民にも支援を受け、漁協が水槽全体を調整し、共同施設を管理する。小割水槽は分譲・貸借・請負等、漁協・組合員・農民・市民・企業から参加者を募集する事も出来る。漁業に陸上資本・人材も活用し、海と陸が交流します。そして海の資源回復に寄与します。

『海と陸』を繋げる接着剤として実行委員会・NPO等の公益団体に期待しています。

 

海から海藻が姿を消し、魚が少なくなったと言われ、水産資源の回復が必要とされています。そこで、長らく海藻栽培の促進活動をボランティアで行ってきました。しかし海藻を栽培しても、少なくなった漁民だけでは回収したものを利用することまで手が回りません。「海と陸の連携」「漁協の活性化」漁民の共同作業、共同経営方式が叫ばれても、経済が伴わないと難しいのが現実です。そこで手始めに、きっかけともなる漁業団地を、エビ・海藻生産をするシステムとして提案させていただくものです。漁協や自治体が主体者ですとそれなりに国や県の支援もありますので、地域一帯事業としてお勧めするものです。

 

 

 

(1)エビの成長に合わせて養殖管理

①ノープリウス ②稚エビ(1mm~) ③子エビ(1cm)

④若エビ(10cm~) ⑤親エビ(15cm~)をローテーションを組んで飼育し、飼料・水質等調整し、養殖密度・生存率の向上を目指します。

従来は、小型の水槽で③を中間育成。大型の放流水層に分養しています。大きさの違う数種類の水槽を使っていましたが、私たちは屋根つき小割水槽100㎡専用として使います。

ローテーションを組みやすい数は3か4の倍数となりますが、ブランド化や地域波及効果を、公共部分の充実・収益または建設上の量的効果等を考えると、大量生産用漁業団地としては水槽30以上のボリュームがお勧めです。

 

(2)基本型

初心者向けとしては③④は分養しないで1水槽で飼育し、受注の多い1匹15gにて漁協に引き渡し、販売窓口の漁協において、需要家の要求に応じて加工用5cm、10cm位の小型、大型⑤を飼育し、細かな需要に対応します。

③④を同じ水槽で育成すると、1回5万匹6回投入、年間30万匹育成が基本型と考えます。

 

(3)分養方式

上記①②迄は種苗生産工場で生産し、③から養殖水槽で育成しますと、例えば

③子エビ(1~10cm) ㎡あたり放流密度1,000匹 1ヶ月

④若エビ(10~15cm) ㎡あたり放流密度 500匹  1ヶ月

⑤親エビ(15~20cm) ㎡あたり放流密度 400匹  1ヶ月以上

と言う事も可能となるでしょう。高度技術習得が必要となりますが、放流密度は全体の中で調整し分養する事になり一定ではありません。

③④を3つの水槽で分養すると、年間1水槽あたり投入40万匹・年12回出荷と計算上はなります。

 

(4)地域調整(漁業団地方式)

漁協は(2)(3)方式を取り混ぜ海面と同じように全体調整・管理し、増産し、増産で得た販売差益を公正に分配する方式にすることで全員が潤うことになります。

なお、飼育開始日は、出荷作業や出荷予定日によって変えれば、月1回で年12回、月2回出荷で年24回、毎週出荷で年48回と、水槽が多ければいかようにも調整可能です。

 

 

 

※以下コスト・設備費等につきましては、東日本大震災の影響により、全面的な見直しをしているところです。
価格については仮のものとしてお考えください(平成24年1月)。

①水槽設備費

②ライフライン公益部門  漁協取り扱い領域として地元で見積して欲しいのですが、 水槽に諸装置をプラスして1水槽2,000万円としてみました。但し施主の希望も取り入れ微調整はあるでしょう。公益部門100水槽で計算しました。内訳は海水給水、排水、電気、ガス、水道、井戸、道路、駐車場、管理センター、区分外壁等他に売店、調理室、発電設備等、一企業で全部装置しようとすると高負担となりますが、団地方式ですと1水槽負担割合が少なくなるので有利です。

③水槽1ケ 直接費用は10mの長さですので、補助水槽工事費含み公共部門・ライフライン等、 施工を業者に任せる等色々考えられます。我々はこのプラントでないと出来ないと言うプラント会社ではありませんので、状況により対応いたします。ご相談ください。

 

 

①養殖者収支15g1匹当たり生産原価10円強K当たり6~700円(水温調整含むが人件費含まず)です。養殖者への漁協からの支払い価を仮に、1匹20円とすると、養殖者の差益1匹10円弱となります。但し、出荷時の大きさにより売価も変わりますので一様には言えませんが、15gとし、分養したときの計算値です。②漁協収支

養殖者からの仕入れ値に利益をプラスして、漁協の持つ販売網で売った時、販売諸費用があまりかかりませんから、輸入価で卸しても充分利益は出るでしょう。

③水槽は分譲・賃貸・養殖管理等に区分。運用方法、費用は色々考えられますので、分養すると大きさによって飼育数が変わります。分配金も変わってくるでしょう。分配基準は地元で協議して作って下さい。なお、モデルが必要な時にはご相談下さい。

④企業等での小規模養殖時は交代や病気等不測に備えるため予備の雇員や設備が必要ですが、共同作業、共同経営により相互融通する、漁協が代行するなど、予備員なし・共同設備で済み、人件費や厚生諸費用も安くなります。

⑤1人の人が管理出来る池面積は、1水槽(100㎡)より数多く出来ますが、ここでは雇用増、併業を推進する一種のワークシェアリングです。雇用は水槽1ケにつき1人、他に管理部門は漁協が担当すると、かなりの雇用増が見込めます。

⑥事業ですので、国・県・市等から設備やPR、販売諸経費に対し、補助もあり、融資制度もありますが、ここでは補助金を当てにしない計画を立てています。

漁協は地域共同体としての性格がある訳で、企業より自治体・住民等との連携がとり易いでしょうから色々企画して欲しいものです。

そして差益の一部を「海の環境修復」「海の森づくり」に使うなら、漁民は海からのボーナス、資源回復となって“豊漁”も約束されることになるでしょう。

詳しい裏づけや数字、補助金、資金調達等についてはメールにてお問い合わせ下さい。

私は、団地ローテーション方式で養殖収支を計算した時に、養殖技術収益として1匹10円と積算しました(売上 45円/匹・15gで出荷とした場合)。

1水槽1,00㎡(=1a)として生産委託費1匹10円 売価3000円/kg とした時

27万匹/年 として270万円  売上約1200万円

30万匹/年 として300万円  売上約1350万円

40万匹/年 として400万円  売上1800万円

となります

国際標準の目標である10㎏/㎡から比べるとはるかに小さな養殖密度です。

この数字を他の産業と比較評価してみます。

 

① 就業形態として

社員数5~9人の中小企業における平均年収 236万円

個人農場平均348万

農業法人役員560万 社員平均241万

となっている農業・製造業と比較した時、一家一水槽が適当と考えてみました。

 

② 農業収量(10アール当たり)と投資額

露地栽培 米・畑の平均年収284万円 施設園芸316万円

この農業ハウスの10アール当たりの平均収量(ハウス設備費㎡当たり 15,000~30,000筆者記)

トマト 200~300万円

イチゴ 400~500万円

バラ  600~700万円

したがって、面積当たりの収量としては養殖者の1水槽100㎡(1a)あたりの収支300万円 および 売上600万円を10倍にしてご判断いただきたいと存じます。

 

③ 農業による家族所得

農業による望ましいと言われる家族所得を1,000万円(大手企業部課長クラス)とすると、

設備投資として3,000万

ハウス  5,000万

となります。(参考資料: 『日本は世界5位の農業大国』 湯川芳裕 著 2010年2月講談社)

平均世帯所得について、埼玉県ではおよそ600万円で、私立高校入学者の学費支給が600万円以下としています。(参考:平成22年10月さいたま市の平均世帯所得541,173円 埼玉県庁HPより)

こうした他産業と比較すると同時に、『海上漁業』を補完する『陸上養殖』として「陸上養殖」のみでも生活出来る収益として積算すると、100㎡1水槽となりました。

1匹当たりの売上げ単価を高くして計算するならばいくらでも『儲かる水産業』として広報するのも一方法ですが、今後漁業再生上必要な事業として捉えると同時に、現状の経済環境を踏まえて他産業と比較するべきと考え、1水槽1家族として積算しています。

なお、『漁業団地』の運用については、地域活性事業のページで詳述していきます。